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2016.05.01

マルティン・ブーバー「我と汝」

偽りの親友は何の助けにもならない

大手企業を定年で退職した高齢者の話です。
現役のときに、親友だと信じて疑わなかった仕事仲間に、第一線を離れて会社での影響力がなくなった途端、手のひらを返したように、無視する態度を取られて、その人はとても自尊心が傷ついたそうです。
結局、親友と思っていた相手は、“損得関係”で付き合っていただけだったのです。
偽りの親友は何の助けにもなりません。
 

私たちが世界に接する二つ態度

宗教哲学者のマルティン・ブーバーは、私たちが世界に対する接し方には二つの態度があると言います。
一つは「我―汝」、もう一つは「我―それ」です。
「我―汝」は、“対話”という「関係性」の世界。そして「我―それ」は、一方的に対象を物質化する「もの」を相手とする世界です。
先の事例のとおり、相手が利用する価値がある間だけつき合う“損得関係”と言えます。
 

共同社会から利益社会に移り変わる

学術的な話になりますが、ドイツの社会学者フェルディナント・テンニースが社会進化論のモデルとして、ゲマインシャフト(共同社会)とゲゼルシャフト(利益社会)を提唱しました。
このゲマインシャフトが「我―汝」、人間本来の自然な本質意志にもとづき、結合を本質とする家族や共同体のような基礎的集団です。
そして、ゲゼルシャフトが「我―それ」、人為的な「選択意志」にもとづき、分離することを本質とする都市などの機能的集団です。
そして企業も本質的には機能的集団(組織)なのです。

「1・5人称」の関係性が課題

マルティン・ブーバーは「愛は我のうちにはなく、まさに我と汝の〈あいだ〉にあるものなのである」(野口啓祐訳「独と愛 我と汝の問題」創文社)と言います。
ですから「愛があるからコミュニケーションが取れるのではなく、コミュニケーションがあるから愛が生まれる」のではないでしょうか。
だから、我「1人称」と汝「2人称」の〈あいだ〉「1・5人称」の関係性、家族や友人などの人的関係を維持することが重要な課題になるのです。
 

ソーシャル・コンボイを維持する

発達心理学の理論に「ソーシャル・コンボイ」という概念があります。
これは個人が有する社会的ネットワークにどれだけ支援してくれるコンボイ(護衛隊)を自分のまわりに維持できるかというモデルです。
幸せな老後を過ごすためにも、現在の仕事に没頭し過ぎず、家族や友達とのコミュニケーション、すなわち「1・5人称」の関係性を大切にしたいものです。
困ったときに助けてくれる、一生付き合うことが出来る人が本当の親友なのです。

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