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2018.06.08

エンディングワークの課題

エンディングワークの課題

 
「寿命が尽きるまで、自立した人生を過ごしたい」
 
シニア世代の誰もが「寿命が尽きるまで、自立した人生を過ごしたい」と望んでいると思います。
しかし、本当に周り人に迷惑をかけずに社会生活をおくることが可能でしょうか。
 
あえて「自立」を強調することは、わたしたちが、社会の一員として、社会や家族に支えられているという意識が弱くなるように感じます。
そのため「家族に絶対迷惑をかけないと宣言している人」が、その自信がかえって仇となり、人生最後のリスクである介護・葬儀・相続についての対策がおくれ、結局、家族に大きな迷惑をかける結果となることになるのではないでしょうか。
 
 

「お節介」視点の専門家を活用する

昔は、地域共同体の一員であることによって「安心」が保障されていました。
一人暮らしの老人が亡くなったとしても、地域共同体が当たり前のように葬儀を行っていました。
すなわち、地域共同体では、「お節介」が社会システム化されていたのです。
しかし、現代社会では、どうでしょう。
プライバシー権や自己決定権が尊重され、「お節介」が民法の準法律行為「事務管理」として定められているのです。
超高齢社会に突入した現在、介護保険などの社会保障制度は整備されましたが、都市部では地域共同体の機能は、残念ながら失われています。
すなわち、厚生労働省が取り組む、地域包括ケアシステムの概念に示された、自助(個人)、互助(近隣)、共助(保険)、公助(行政)の中の“互助(近隣)”の機能が足りないのです。
 
そこで必要とされるのが、本人・専門家・家族(代理人)の三位一体モデルだと思います。
そして、本人の加齢に伴う諸問題の調整役としての専門家の力量が問われているのです。
専門家は、2・5人称の視点、「お節介」視点が必要ではないでしょうか。
 

エンディングワークの課題 1段階 壮健

それでは、エンディングワークのフロー図から、エンディングワークの課題を整理してみたいと思います。
図の左端には、三位一体モデルである本人・専門家・家族(代理人)、そして親族という登場人物が示されています。
図の左上であるエンディングワークが現状だとしましょう。
 
エンディングノートを記入しながら、相続問題に対処するために「遺言」、認知症に備えて「任意後見契約」、終末期の医療に関する希望として「尊厳死宣誓書(リビング・ウイル)」や「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)」を検討する、まだまだ元気な時期です。

エンディングワークの課題 2段階 身体機能低下

身体機能が低下し、身の回りの世話や契約行為・財産管理などに支援が必要な段階です。
例えば、娘さんに介護保険の手続きや預貯金などの管理を依頼することが必要な状態です。
「娘に世話になったので、相続財産で報いたい」と感じるのが人情でしょう。
しかし、現在は長寿社会、仏教でいう「生老病死」の「病」と「死」の間が長期化しているのです。
そこで娘さんの経済的負担を軽減するために、娘さんと財産等管理契約を結び、特約で報酬を支払うことも検討が必要になりました。
ここで注意したいのが、第三者の目です。
通常、財産等管理契約は、移行型として任意後見契約とセットで結びます。
ところが、受任者である娘さんが、本人の判断能力が減退しているのにも係わらず、家庭裁判所に任意後見事務の開始するための申立を怠ったとしたらどうなるでしょう。
家族・親族から、娘さんの横領行為が疑われてしまいます。
 
ここでも、三位一体モデルの専門家による契約の監査などが求められるのです。
また、現在、平成18年に信託法改正が行われ、福祉型信託(家族信託)の活用が話題になっています。
しかし、いくら素晴らしい制度でも、本人、家族そして親族とのコミュニケーションが不十分していると、要らぬ詮索から、争いの火種になりかねないのです。
 
 

エンディングワークの課題 3段階 判断能力減退

任意後見受任者は、家庭裁判所に後見開始の申立を行い、そして任意後見監督人が選任され、任意後見が開始することになります。
本人は、信頼できる受任者と事前に支援内容を決めているので安心です。
しかし、ここで問題になるのが、裁判所のチェックが入るようになると、本人の居住用不動産の処分に許可がいるなど、この段階では相続対策が難しくなるということです。
また、民法(873条の2)では、後見人が死後事務として葬儀を施行することは、後見人と相続人とのトラブルを懸念して、認めていないと考えられます。
本人の判断能力がある間に、相続対策として遺言(遺言執行者も決める)を作成し、葬儀の準備として、死後事務委任契約を結び、葬儀社との事前契約によって葬儀費用を相続財産から分離しておくことも大切ではないでしょうか。
 
そして,「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)」、医師との信頼関係に基づき、終末期に備えることも、本人・専門家・家族(代理人)の三位一体モデルと言えるでしょう。
ところで、専門家とは、人類の歴史上、医師と法律家と宗教家の三つの職業を指すと言われています。
 
どんなことでもその道の専門家に任せるのが一番というたとえで、「餅は餅屋」という諺がありますが、古来、力を与えてくれる特別な食べ物「餅」を提供してくれるお節介な専門家に出会いたいものです。
 

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